『高校演劇における上演許可の必要性と5000円(その2)

さて、上演許可の件です。
私は、高校演劇の大会で既成の脚本を上演する際に、法的にみて上演許可が必要なケースは結構多いと思っています。それは、かなりの割合で既成脚本の改変が行われていると思われるからです。
ただ、県の高校演劇連盟が参加校に対して、(著作権法についての正確な説明を徹底せずに)、既成作品を上演する各校には一律に必ず上演許可をとることを求めていること、そして、上演許可を著作権者に求めると、(著作権法についての正確な説明を徹底せずに)結構な確率で5000円とられることに疑問を持っているのです。


残念ながら、私にはいまだ高校演劇の大会について正確に論ずるだけの準備がないので、今日のところはさしあたり文化祭について考えてみたいと思います。というのは、学校の文化祭や学芸会での上演をめぐっても、上演許可をとっていないとして、著作権者からクレームがつくケースがあるようなのです。


昨年10月に刊行された、著作権法の権威による体系書があります(中山信弘著作権法有斐閣)。
この本の275ページ以下に著作権法38条1項の解説があります。
そこでは、学校の学芸会で既成の脚本を上演する例を挙げて、著作権法38条1項が適用されるとあります。38条1項を読んだらそう解釈するのが当然でしょう。


余計なことですが、中山先生は、形式論的には翻案利用は認められないとしつつも、学校の学芸会では時間の都合で一部省略したりすることは日常的に行われていることであり、同一性保持権に関してはやむを得ぬ改変と解することになろう、との見解を示しているのです(この部分は訴訟になった場合にどのような判決が示されるかは微妙だと思いますが)。


この中山先生のいう、改変も許されるという点について、まったく受け入れられない考え方だという劇作家の方も多い?かもしれません。「いくら著名な法律家だからといっても、芝居のことはまったく理解していない。作家がどんな思いで1つ1つの言葉を書いているか、まったくわかってない」という批判もありそうです。私は、脚本に改変を伴う場合は原則としては文化祭でも上演許可をとったほうがいいんではないかという気もします(この論点は今後改めて論じます)。


話がそれました。本題に戻しましょう。私は中山先生の上演許可は不要という部分の解説は妥当だと思います。
まず、(学芸会とは若干異なりますが)文化祭での上演許可は、無料公演であれば38条1項の規定から不要と考えるのが自然だと考えます。というのは、文化祭が38条1項に該当しないとするなれば、該当するケースは果たしてこの世にあるのでしょうか?私は全く想像できません。
ただ、チャリティーのためにわずかな金額をとるケースがあるかもしれませんが、その場合はおそらく営利目的とみられるので、上演許可をもらったほうがよいと思います。
あと気になるのは、文化祭をおこなっている学校への入校にあたって、チケットを有料で(どんなに安価でも、チャリティーでも)販売している場合です。この場合、文化祭全体が営利目的とみられるでしょうから、上演にあたって芝居自体ではお金は取っていなくても上演許可をもらう必要があるように思います。
判例上、営利目的かどうかはかなり厳格にみられる(営利目的と判断されやすい)ようですので、注意が必要だと思います(この点は、いわゆるカラオケ法理とからめて改めて書きたいと思います)。


では、何だかえらく突っ込み不足ですが、今日はこのくらいにしておきます。


(追伸)
今日この文章を書いてて、著作権法全体の立法趣旨だとか、38条1項の立法趣旨を早めに整理しておいた方がいいんじゃないかと強く思ってます。