高校演劇と上演許可

ある劇作家からのコメントへの返答(その3)―戯曲の著作者が有する同一性保持権とはどのようなものか?―

こんにちは。 今日も劇作家のOさんからいただいたコメントに対するお返事です。*1 自分でもちょっとしつこいと思っていますので、Oさんへのお返事は、さしあたり、今日で最後にしたいと思っています。 例によって、最初に、今日初めてこのサイトを読む方のた…

ある劇作家からのコメントへの返答(その2)―そもそも権利制限規定とはなにか―

こんにちは。 さて、今日は劇作家のOさんからいただいたコメントに対するお返事、その2です*1。 今日はちょっと長くなりそうです。 では、早速いただいたコメントを読んでみましょう。 2011年6月17日付のものです。 あなたのおっしゃることは、「高校演劇…

ある高校演劇部顧問からのコメントへの返答(その1) ―脚本への歌詞の引用をめぐって―

こんにちは。 私がブログの更新ができずにいる間に、先日紹介した大橋むつおさん*1以外にもコメントをいただきました。 今日はそのなかから、高校の舞台芸術部(=演劇部)の顧問をされている片岡直史さんからのコメント*2を取り上げます。 早速、いただいた…

ある劇作家からのコメントへの返答(その1) ―権利制限規定と同一性保持権の関係をめぐって―

こんにちは。 たいへんご無沙汰しています。 今年前半もいろいろありました。 そんななかで印象に残ったのは、『南へ』公演中の野田秀樹さんの言葉。そう「劇場の灯を消してはいけない」*1ですよね。 私が観た芝居では、作・井上ひさしさん、演出・栗山民也…

高林龍先生の著書が著作権制限に熱い件 −高林龍『標準 著作権法』を読む(その1)−

こんにちは。 最近、高林龍先生の『標準 著作権法』(有斐閣、2010年12月)*1が出版されました。 で、とりあえず日本橋の丸善で立ち読みしてみたんですが…、私、気がついたらレジに並んでました。 この本、かなり、すごい内容になっています。 まだご覧にな…

土肥一史「著作権法の権利制限規定の性質」を読む ―土屋俊「演劇研究者のための著作権セミナー」に対する疑問に関連して―

こんにちは。 さきほど、なんとなく、Googleで「演劇 著作権」で検索してみたんです。 で、上位から順番に見ていったところ、5番目に土屋俊先生の「演劇研究者のための著作権セミナー」のPDFファイル*1が・・・(2010年12月13日13時30分・日本時間現在)。 …

斉藤博「新著作権法と人格権の保護」を読む

こんにちは。 私は、ここしばらく、全国高等学校演劇協議会の「著作権ガイドライン」*1のことを取り上げてきました。 が、こんなことばっかり書いていると、その世界の方からはイチャモンつけてるみたいに思われてるんじゃないかと、結構ヒヤヒヤしています…

全国高校演劇協議会が、高校生が非営利・無料・無報酬で上演するときにも、上演料5000円を支払うよう指導する理由とは?(その2)

こんにちは。全国高等学校演劇協議会が作成した「著作権ガイドライン」*1についての検討を続けます。 まず、前回*2の確認ですが・・・。 全国高校演劇協議会は、高校演劇部の非営利・無料・無報酬で脚本の改変がない上演についても「上演許可」を取ることを…

全国高校演劇協議会が、高校生が非営利・無料・無報酬で上演するときにも、上演料5000円を支払うよう指導する理由とは?(その1)

こんにちは。 全国高等学校演劇協議会が作成した「著作権ガイドライン」(以下「ガイドライン」と略します)*1についての検討を続けます。 「ガイドライン」は、高校演劇で既成の脚本を上演する場合の上演料について、次のように書いています。 高校演劇では…

全国高校演劇協議会が「著作権ガイドライン」をアップしていた

こんにちは。ご無沙汰しています。 ビッグニュースです! あの全国高等学校演劇協議会が、「著作権ガイドライン」*1を公式サイトにアップしています。 今年の9月23日にアップされたようです(サイトに具体的な更新履歴が書いていないので定かではありませ…

著作権法第38条1項に関するあるコメントへの返答

こんにちは。 今日は、最近のエントリーとは少し違った切り口で書きます。 なるべく著作権法上の問題に限定したいと思いますが、テーマの性質上、いつも避けている演劇の世界の実情にも言及せざるをえません。 アマチュアで演劇の脚本を書かれている森崎啓介…

著作権法第38条1項と上演許可・同一性保持権(成井豊さんの例)

こんにちは。 今日は成井豊さんの事例*1を取り上げます。 成井さんは演劇集団キャラメルボックス(高校生にも大変人気のあるプロの劇団)で作・演出を手がけられています。 まず1つ目の問題、著作権法第38条1項に直接関わることからです。著作権法第38条1項…

著作権法第38条1項と上演許可(三谷幸喜さんの例:再論)

こんにちは。このエントリーは、先日の三谷幸喜さんの記事*1の書き直しです。 三谷幸喜さんは、自分が積極的に関わらないところで自身の作品が上演されることを認めていません。 それは、アマチュアの演劇はもちろんですが、上演するのがプロであっても同様…

著作権法第38条1項と契約のoverridability

こんにちは。 早速はじめます。著作権法第38条1項は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています。 しかし、演劇の世界では、たとえそれが高校生による、非営利・無料・無報酬での上演で、かつ脚本の改変が一…

著作権法第38条1項と上演許可(三谷幸喜さんの例)

(9月7日追記 このエントリーには明かな間違いが含まれています。この問題に興味をお持ちの方は、以下に示す、私の9月7日付けのエントリーをお読みください。http://d.hatena.ne.jp/chigau/20100907/1283860033)こんにちは。 今日2本目のエントリーで…

著作権法第38条1項は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています!

こんにちは。 今日のテーマは、「著作権法第38条1項は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています!*1」です。何で今あらためてこんなことを書くのかというと、何だか状況がよくないからです。実は、さっき…

著作権法第38条1項と同一性保持権(同一性保持権の放棄?:その2)

こんにちは。私の前回記事に対して、はてなブックマークを通じて、適切な指摘をいただきました。*1 そこで、今日は、その指摘に関連して、「同一性保持権の放棄?:その2」を書いておきたいと思います。 いただいたご指摘は、鴻上尚史さんの戯曲『トランス…

著作権法第38条1項と同一性保持権(同一性保持権の放棄の問題)

こんにちは。まずはいつもの確認からです。 著作権法第38条1項は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています。が、著作権法第50条により、これに当たるケースであっても、著作物及びその題号に変更、切除そ…

著作権法第38条1項と同一性保持権(「やむを得ないと認められる改変」とは? −覚書−)

さて、今日は、前回の青山高校の事例に出てきた、「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」(著作権法第20条第2項第4号)に含まれる問題について、覚え書き的にまとめておきたいと思います。*1 毎年文化祭で多数の…

著作権法第38条1項と同一性保持権(問題の所在:具体的事例から)

こんにちは。 今日はちょっと回り道をして、私の問題意識の原点を、具体的な事例を通して書いてみたいと思います。 では始めます。 著作権法第38条1項は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています。しかし…

著作権法第38条1項と同一性保持権(序)

約2年ぶりに「高校演劇と上演許可」についての更新です。 やっとこれまでの考察の枠組みを乗り越えるアイデアを見つけることができました。 最初に、私が最も問題だと思っていることをはっきりさせておきます。 著作権法第38条1項*1は、非営利・無料・無報…

日本演劇協会は日本音楽著作権協会(JASRAC)よりも恐ろしい!?

著作権法第38条1項*1は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています。*2 しかし、著作権法にこのような著作権制限規定があるにもかかわらず、日本の演劇界では、無料での上演に対しても上演料(著作権使用料…

高校演劇において著作権指導はどうあるべきか(その4)

さて、前回の続きです。 著作権法第38条1項*1はなぜ存在するのか、考察をつづけます。 前回の結論は、著作権は「文化の発展、創作活動の奨励という目的を達成するために、人工的に付与されたものに過ぎない」ものであり、「制度目的に応じて、どのような行…

高校演劇において著作権指導はどうあるべきか(その3)

さて、今回は、ようやく、著作権法第38条1項の規定が存在する意味を考えてみます。 著作権法第38条1項 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対…

高校演劇において著作権指導はどうあるべきか(その2)

最初に前回の内容確認をしておきます。 私は、高校演劇での著作権指導は、モラルから入るのではなく、まず著作権とはどのようなものか、を法律に基づいて理解させるところから始めることを提案しました。 「法律にもとづいて」が大事なところです。 具体的な…

高校演劇において著作権指導はどうあるべきか(その1)

今日は、この2〜3週間の間に自分が書いた文章を読み返してみました。 読んでみて、議論が全然前に進んでなくて、自分の力のなさにアホらしくなってしまいました。 これにへこたれず、何とかがんばっていきたいと思います。 そんな私が、今一番気になってい…

高校演劇の上演許可指導と法教育上の問題(その2)

こんにちは。 今日は、全国高等学校演劇協会が既成脚本の上演にあたって上演許可を必須としたことが、どんな問題につながっているのか? 具体的な事例を通して考えていきたいと思います。 皆さんに紹介したいのは、著作権法第38条1項*1に無自覚な著作者(あ…

高校演劇の上演許可指導と法教育上の問題(その1)

すでに紹介したとおり、全国高等学校演劇協議会は加盟校に対し、既成脚本の上演する際は必ず上演許可を得るよう指導しています。 今日からは、高等学校における法教育、著作権教育の観点からみて、このような全国高等学校演劇協議会の指導にどのような問題が…

「全国高等学校演劇協議会各大会における著作権の扱いについて(通達)」について

今日は、先日からの課題だった、「全国高等学校演劇協議会各大会における著作権の扱いについて(通達)」*1について検討したいと思います。 この文書は、1997年10月6日付で全国高等学校演劇協議会会長の相澤一好氏の名前で各都道府県会長及び事務局長宛てに…

なぜ高校演劇の上演料=5000円にこだわるのか?

どうも。 今日は、またまた予定を変更して、私がなぜ高校演劇(非営利・無料・無報酬)の上演許可にあたって、5000円を著作権者から要求されることにこだわっているのかを、メモしておきたいと思います。それは一言でいうと、「演劇界のグレーゾーン金利…