著作権法第38条1項と上演許可(三谷幸喜さんの例)
(9月7日追記 このエントリーには明かな間違いが含まれています。この問題に興味をお持ちの方は、以下に示す、私の9月7日付けのエントリーをお読みください。http://d.hatena.ne.jp/chigau/20100907/1283860033)
こんにちは。
今日2本目のエントリーです。
著作権法第38条1項は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています。
が、こういうケースが存在します。
三谷幸喜さんは、自分が積極的に関わらないところで自身の作品が上演されることを認めていません。
それは、アマチュアの演劇はもちろんですが、上演するのがプロであっても同様です。
三谷さんは、『オケピ!』の「付記」に、次のように書いています*1。
これは、パルコ・プロデュースのミュージカル『オケピ!』の上演台本です。
これを読み、よし自分たちもこれを上演してみよう、と思った方がいたら、出来れば止めてください。これは、あくまで「読み物」であり、そういうことのために活字にしたわけではないのです。
(中略)
僕の知らないところで、僕の知らない人たちによってこの作品が上演されるのを、僕は決して希望しません。
ましてや、僕が一生懸命書いたホンが知らないところで勝手にアレンジされ、自分らのやりやすい形に書き直されて上演されるなんて、考えただけでも、憂鬱になります。
三谷さんがこういう考え方の方だということは、演劇をやる人にはよく知られていると思います。
実際、以前、高校演劇の世界でも、三谷さんの作品を無許諾で上演して問題になったことは有名です。
ですから、三谷さんの戯曲はほとんど活字になっておらず、『オケピ』は第45回岸田國士戯曲賞を受賞したこともあって、例外的に出版されているのです。
で、私の結論としては、三谷さんの作品のように、たとえ上演するのがプロの場合で、お金を払う約束で著作権者に上演の許諾を求めたとしても基本的には許諾が得られないケースでは、著作権法第38条1項の適用による無許諾・上演料無料での上演もできないと考えてよいと思います。
ただ、法的には問題とはならない?と思いますが、私には、著作権法の目的に照らして引っかかる点が1つあるのです。
著作権法第1条を掲げます。
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
引っかかるのは、後半の「もつて文化の発展に寄与することを目的とする」ってところに関連しています。
三谷さんは『オケピ!』の「あとがき ― 作者は語る。」で次のように言います。
それに僕は、本文の終わりにも書きましたけど、自分の作品が自分の関わらないところで上演されることを望んでいない。
(中略)
その後も戯曲だけが作品として残って、末永く各地で上演され続けていくなんて、そんなこと考えたこともない。
こう言われてしまうと、それもまた違うんじゃないかとも思うのです。
なぜなら、その戯曲が優れた作品であれば、「戯曲だけが作品として残って、末永く各地で上演され続けていく」ことが「文化の発展に寄与する」ことにつながるはずだからです。
単純に言うと、岸田戯曲賞を受賞した作品が、著作者のこだわりによって、著者が亡くなったあとに一切上演できないということになるなら、文化の発展にとって大きな損失です。
三谷さんも、きっと、亡くなった作家の戯曲を上演しているのを見たり、場合によっては上演したことがあるんじゃないでしょうか?
ないかもしれませんが…。
しかし、三谷さん個人はともかく、演劇に関わる人たち全体で言えば、亡くなった作家の戯曲を上演しているのを見たり、場合によっては上演したりしてるわけですし、そういったことが、演劇文化の発展に寄与しているのは疑いのないことだと思うのです。
なんか、だいぶ話がズレました。
ともかく、三谷幸喜さんの作品を著作権法第38条1項を根拠に、無許諾で上演することを肯定するのは難しいと思います。
(以下9月7日追記)
はてなブックマークでツッコミをいただきました。
copyrightさんから「ちょっと違うような気がする」、cityheimさんのcopyrightさんへのRTで「ホントですね。38条1項の適用は著作者の意思に左右されませんからね」という内容です。
おっしゃる通りで相当恥ずかしい思いをしています。
今後も素人なりにがんばっていきたいと思いますので、何かお気づきの点があればコメントしていただけるとうれしいです。
なお、三谷さんの件は改めてまとめ直します。