著作権法第38条1項は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています!


こんにちは。


今日のテーマは、「著作権法第38条1項は、非営利・無料・無報酬での上演について、無許諾かつ著作権使用料無料での上演を認めています!*1」です。

何で今あらためてこんなことを書くのかというと、何だか状況がよくないからです。

実は、さっき、ふとグーグル大先生に「高校演劇 上演許可」って入力してみたんです。
そしたら、検索結果の上位に出てくる出てくる…。
もう勘弁してくれって感じです。


というのは、著作権法と何らかの形で日常的に接してらっしゃる方からすると、近年、著作権法をめぐってはなんだかんだいっても「フェアユース」問題って重要じゃないですか。
雲行きはあやしいですけど。

でも、少なくとも高校演劇をはじめ、演劇の世界では未だに権利制限規定とか「フェアユース」なんてどこ吹く風なんです。


WEB上からいくつか拾ってみますね。

まず、「茨城県高等学校演劇連盟:著作権についての注意事項*2」からです。

著作権について
 著作権のある著作物を著作権者の許諾を得ないで無断で使用すれば、著作権侵害となります。
 また、著作者に無断で著作物の内容や題号を改変したり、著作者が匿名を希望しているのに、著作物に勝手に本名をつけて発行したりすれば、著作者人格権侵害となります。


著作権
 人間の思想や感情を創作的、創造的に表現したもので、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものを「著作物」といいます。そして、著作物を創作した作者を「著作者」または「著作権者」といいます。
 著作権法は、著作者の権利の内容を定め、これを保護し、なおかつ公正な利用をはかるための法律で、複製権(著作物を複製する権利)、貸与権(著作物を公衆に貸与する権利)など10以上の権利を定めています。権利の内容は、著作物の利用状況にあわせて決まっており、これら権利のすべては著作権者が専有しています。従って権利内容の行為を行うときは、著作権者の許可(許諾)が必要です。


(中略)


■上演に伴う著作権料の支払いについて
 規制作品使用の場合は、必ず原作者に文書で使用許可を求め、使用料を支払ってください。無断上演は絶対にしないこと。出版物の最後に連絡先が載っています。連絡先が不明の場合は、出版社に問い合わせてください。
 社団法人日本演劇協会の規定では、公共(アマチュア)演劇上演料について「入場料無料・90分以内」では10,000円としています。ただし高等学校演劇上演については、「入場無料・1回」について5,000円としてあります。


(以下省略)


以上です。
ひどい。ひどすぎます。
権利制限については一言もなしです。


次にいってみましょう。
群馬県高等学校教育研究会演劇部会の「著作権について」のページ*3です。

著作権について  

演劇を上演するにあたって、近年、様々なレベルの「著作権」に対する配慮が厳しく求められるようになってきました。高校演劇でも例外ではありません。特にコンクール形式の大会では、権利者に対して許可を得ていることが証明できない作品は審査対象外となったり、上演自体認められない場合もあります(ありました)。紙切れ一枚あるかないかのせいで、せっかく積み上げてきた稽古、装置・衣装作りほか様々な努力がムダになってしまいかねません。著作権の尊重については軽く考えず、各校とも十分に注意して下さい。
  ≪全国高演協・上演許可の取得について≫
  ≪著作権関係調査シート(word文書)≫ ※ 県大会・関東大会等で使用したチェックシートです。ご利用下さい。

      • 台本について ------

既成作品と創作作品では、配慮すべき要素が異なりますので、分けて解説します。

◇◇◇ 既成の脚本 ◇◇◇
◆作品を改変せずにそのまま上演する場合
作者に対して、上演許可を書面で取って下さい。

(以下省略)


根本的には全国大会の参加規程がいけないんですが、それにしても、既成の脚本を作品を改変せずにそのまま上演する場合に、「作者に対して、上演許可を書面で取って下さい。」って…。


北海道で高校演劇に携わっている「じゃんの部屋」さんのサイトには、大勢の顧問の先生方の協力をもらって実現した脚本集「北海道高校演劇脚本集」のページ*4があります。

上演許可を取りましょう!
最近、高校演劇の著作権に対する考え方は非常に厳しくなってきています。この脚本集の中にある作品を上演したいという場合は、必ずメール等で作者に連絡を取ってください。上演許可は必ず取りましょう!!


この脚本集は、「大勢の顧問の先生方の協力をもらって実現した脚本集」なので、高校演劇で改変なく上演可能です。
それなのに、「高校演劇の著作権に対する考え方は非常に厳しくなってきてい」るので、「上演許可は必ず取りましょう!!」って言われても…。

しかも、さらにマズイのはこの脚本集は、上述の茨城や群馬の例と違って、大会(上演許可の取得を上演の条件としている)での上演だけを念頭においているわけではないところです。


さらに、こちらも。
高校演劇劇作研究会編集・発行の『季刊 高校演劇』のページ。
「上演許可願について」*5に次のようにあります。

上演許可願について

1、本誌所載の作品の上演にあたっては、かならず、作者の上演許可を得て下さい。

2、日本演劇協会の定めるところにより、営利を目的としない公演の場合も、脚本使用料として上演1回につき下記のとおりお支払い下さい。

  これは著作権を尊重するためのものです。

 A 無料公演のとき

    上演90分以内のもの……5,000円以上

 B 有料公演のとき

    入場料500円以下/上演90分以内のもの……1万円以上

3、この規定は、教科書所収のものを教材として教室で発表する場合の他は、特別の事情がないかぎりすべて適用されます。

4、本誌掲載作品の上演許可に関する連絡・交渉あるいは脚本使用料の送付については、かならず、直接作者あてにお願いします。

  本誌事務局では取扱いは致しません。


なんだか大変です。

著作権を大事にしろって言うのなら、1度くらい著作権法の条文を読んでみてもらいたいと思います。

*1:著作権法第38条1項 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。

*2:http://mito.cool.ne.jp/ibakouenren/04copyright/guide.htm

*3:http://gunkouen.fan-site.net/tsukuro/j_chosakuken.html

*4:http://www.ne.jp/asahi/hokkaido/s.arai/gikyoku.htm

*5:http://gekisaku-id.hp.infoseek.co.jp/kesto/right.html#anchor